むし歯と酸蝕症の原因と予防について
むし歯のできやすい場所
むし歯は次のような場所にできやすいとされています。
- 奥歯の窪みや溝(小窩裂溝)
- 歯と歯の間(隣接面)
- 歯と歯ぐきの境目(歯頸部)
一見、問題がなさそうに見える歯であっても、中でむし歯が広がっていることも多く、詳しい診査が必要です。
- 奥歯の溝
- 歯と歯肉の境目
- 歯と歯の間(上から見るとむし歯がないように見えますが)
予防について
1)砂糖を減らす
甘いお菓子は、お子さんの大好物です。これを全く食べさせなくするのは、無理ですが、取る量・回数を減らすことは出来るのではないでしょうか。
2) 細菌の塊(プラーク・歯垢)を取り除く
毎日の歯ブラシで歯についた細菌の塊(プラーク・歯垢)を取り除いて下さい。歯垢染め出し剤の利用や、「正しい歯磨き」の指導を受け、実施することが大切です。
※食後30分以内に歯磨きしても、大丈夫です。
一時、食後直ぐに磨くと、歯に傷がつくとの報道がありましたが、「ナイロンの毛で100g程度の力」と食べる時に「エナメル質が数十キロの力で接触する」のでは、食べる方が傷つきます。
歯磨きの傷を気にするのなら、一口噛んでから30分後に噛まないといけなくなって、食事できません。
3) 歯を強くする
歯ができる時期にカルシウムなどの栄養を十分に取り、フッ化物を利用して(塗布・洗口・歯磨剤)、むし歯になりにくい歯にしましょう。
4) 間食の時間を減らす
食事やおやつは決められた時間に取り、何回もの間食で甘い物が口の中に残る時間が長くなることのないようにして下さい。また、食べたらすぐ磨く習慣をつけ、歯垢の付着時間を短くしましょう。
酸蝕症とは
酸蝕症とは胃酸の逆流(つわり・逆流性食道炎・拒食症)やPH5.5以下の酸性の飲食物(柑橘類や酸性飲料)を飲食することにより、酸による歯の表面の脱灰(カルシウムが溶け出す)が起こり、むし歯(食物中の糖分が口の中の細菌によって酸に変化)と同様に歯が溶けることで発生します。
以下のPH値表は、田上順次 著:北迫勇一 (東京医科歯科大学大学院う蝕制御学分野)及び クインテッセンス出版(中島 郁)のご好意により掲載しております。
<参考文献>
●歯が溶ける!? 酸蝕歯って知っていますか?
監修:田上順次 著:北迫勇一 (東京医科歯科大学大学院う蝕制御学分野) クインテッセンス出版
●nico 2014年7月号 特集 飲食物で歯が溶ける?! クインテッセンス出版
Q&A
フッ素(フッ化物)とはどのようなものですか?
フッ素は自然の中に広く分布している元素の1つです。地殼にある約90の元素中、13番目に豊富に含まれています。フッ素は元素単独では存在せず、フッ化物として螢石、水晶石、リン鉱石、などに多く含まれています。地中はもとより海水、河川水、植物動物などすべてに微量ながら含まれており、量は異なるものの、私たちが食べたり飲んだりするものの中にも、必ずといっていいほど含まれています。
フッ化物はどうしてむし歯予防に有効なのですか?
フッ化物がむし歯予防に有効な理由として、次のような働きがあるからです。
1)歯の構造を強くする。(歯質の改善)
フッ化物が歯の一番表層のエナメル質に作用し、エナメル質の結晶構造を改善します。エナメル質の構造は、ハイドロキシアパタイトという結晶構造でできています。この結晶は、むし歯菌が産出する酸に対して脆く、溶けてしまいます(脱灰)。フッ化物が作用すると、ハイドロキシアパタイトがフルオロアパタイトという極めて酸に対して溶けにくい結晶構造となり、歯の表面が丈夫になります。
2)歯の表面を修復する。(再石灰化)
むし歯になりかかった(カルシウムが溶けだすこと)エナメル質に作用し、その部分に再びカルシウム等が沈着して歯の表面を修復します(再石灰化)。この修復はフッ化物が歯の表面にたくさんあると(歯の表面の濃度が高くなると)唾液中のカルシウム等を取り込む作用が働き、再石灰化が進行します。また、再石灰化が進行するので脱灰するのが抑制されます。
3)その他のフッ化物のはたらき
フッ化物は歯質を強くしたり、修復したりする作用以外にもむし歯菌の酸を産生するのを抑制したり、歯垢(細菌の塊)の形成を抑制する働きがあります。