睡眠時無呼吸症候群とは

 睡眠時無呼吸症候群とは、睡眠中に断続的に無呼吸(10秒以上続く気流停止)を繰り返し、その結果、睡眠不足からくる日中の眠気、高血圧、心疾患などの種々の症状を呈する疾患で、中年男性のいびきをかく人や、肥満者に多くみられます。 睡眠時無呼吸症候群は以下の3つに分けられます。

  1. 閉塞型
     上気道部(鼻腔、アデノイド・口蓋扁桃・軟口蓋領域、舌根部)の物理的閉塞による気流停止で、無呼吸発作中も胸部や腹部の呼吸筋の運動は維持される。
  2. 中枢型
     呼吸運動をつかさどる脳幹部に何らかの異常があり、呼吸筋運動そのものが停止して無呼吸となる。(いびきとは無関係)
  3. 混合型
     睡眠時無呼吸症候群の9割以上は閉塞型で、歯科的治療の対象は閉塞型に限られます。

いびきと睡眠時無呼吸について

 いびきは気道が完全に閉塞しないものの狭窄した場合に生じ、狭窄がさらに進んで閉塞となると、睡眠時無呼吸となります(図1)。したがって、閉塞型の睡眠時無呼吸症候群においては、ほぼ100%いびきを伴います。そしていびきをかく人の少なくとも1~2%には睡眠時無呼吸症候群があるといわれています。

いびきと睡眠時無呼吸(閉塞型)の関係

 いびきや睡眠時無呼吸おける気道の狭窄あるいは閉塞部位は 、上気道部(舌根部、アデノイド・口蓋扁桃・軟口蓋領域、鼻腔)です。

A.舌根部
 睡眠中に舌筋が弛緩し、舌が後方に落ち込んで(舌根沈下)、弛緩した咽頭側壁ともに気道を閉塞して睡眠時の無呼吸を引き起こします。

B.アデノイド・口蓋扁桃・軟口蓋領域
 アデノイドや口蓋扁桃の肥大、軟口蓋の形態異常などによって咽頭腔が狭められている場合、睡眠中に気道を取り巻いている筋肉の弛緩が生じると、さらに気道が狭められ、いびきや無呼吸を生じます。

C.鼻腔
 アレルギー性鼻炎、肥厚性鼻炎、慢性副鼻腔炎、鼻中隔彎曲症などによる鼻閉塞が原因で、いびきや睡眠時無呼吸を生じます。

< スリープスプリント >

 スリープスプリントとは、習慣性いびき症あるいは閉塞型睡眠時無呼吸症候群の患者では、解剖学的に咽頭腔が狭小であったり、さらには就眠時に舌根が沈下してしまうことが多いことから、下顎を前突させて中~下咽頭腔の開大をはかり、気道の閉塞を防ぐ(図2)、マウスピースに似た歯科的口腔内装具です(写真1~4)。とりわけ治療法が簡便でしかも比較的効果の高い保存的療法です。 耳鼻咽喉科や内科と歯科が連携することが大切です。

※保険給付の条件

 医科で睡眠検査(終夜睡眠ポリグラフ検査)を行い、睡眠時無呼吸症と診断され、歯科医院を紹介された場合のみ保険診療が可能です。医科での検査、診断を経ない場合や、医科で「睡眠時無呼吸症候群」とは診断されなかった「軽い低呼吸症」や「いびき症」などの場合はすべて自費になります。歯科で、顎関節症や、歯ぎしりと診断され口腔内装置を作成する場合は保険診療が可能ですが、この場合はスリープスプリントとは異なります。詳しくはご相談ください。

スリープスプリントの作用機序

参考文献
黒崎 紀正/黒田 敬之 監修
「いびきと睡眠時無呼吸症候群の歯科的治療」砂書房